首下がり症の診断と治療、リハビリ

首下がりのリハビリ

首下がりの原因は、長時間の前かがみの動作によって、首の付け根から背中の上にかけて存在している筋肉の炎症が発生して生じます。

首を支えている筋肉の多くは、肩と肩甲骨から発生しているので、首を動かすよりも、肩甲骨と背中を動かすリハビリが大切です。

また、背中や腰から曲がっている人は骨盤から姿勢を整え、体幹が安定しないと首の安定を得ることは不可能です。

首を支えた状態で維持する筋肉と首を持ち上げる筋肉は異なり、瞬間的に頭を持ち上げることはできるのですが、それを維持することが困難となります。特に歩く時や、夕方につらくなってきます。そのため、どの筋肉を鍛えればよいかを知るため専門家によるリハビリ指導をお勧めします


例えば、多裂筋、頚半棘筋などは、深部にあって頚部の姿勢維持に作用し、頭板状筋、肩甲挙筋などは頚部を持ち上げる動作時に作用します。僧帽筋は頸椎、上腕骨、肩甲骨、脊椎の広い範囲に作用してそれらを引き寄せて肩や頚部の関節に力が入りやすい状態を維持させます。

当院では、遠方の患者さんや通院困難な患者さんのために、2週間の入院集中リハビリを行っております。シェアープログラム(the Short and Intensive Rehabilitation (SHAiR) Program)といって、理学療法士によるリハビリとベッドサイドでの自己訓練と休息を繰り返し、週1回脊椎専門医によって指導を受けます。

リハビリで改善後は、定期的な外来フォローを予定します。

動画で見る「首下がり症」

なるべく、発症早期に診断してリハビリをすることが改善につながります。陳旧化(古い傷や痕跡、過去に起こった変化)すると首を持ち上げる筋肉が壊死をしてしまい、リハビリが無効となってしまいます。

ご希望の方は、電話予約をしてから外来受診していただき、外来で、入院前に必用な検査を行い、首下がり症の状態を診断し、改善の見込みがある場合はシェアープログラムの適応を相談します。

リハビリ内容、首下がり症全体について、下記文献に書かれております。

参考文献

1)遠藤健司, 佐野裕基, 山内智康, 石山昌弘, 山中邦裕, 上野竜一, … & 山本謙吾. (2023). 特集 首下がり症候群の病態と治療 首下がり症候群に対する運動療法. 脊椎脊髄ジャーナル, 36(7), 515-520.
2)Isogai, N., Ishii, K., Igawa, T., Ideura, K., Sasao, Y., & Funao, H. (2023). Radiographic Outcomes of the Short and Intensive Rehabilitation (SHAiR) Program in Patients with Dropped Head Syndrome. JBJS Open Access, 8(3), e23.
3)急増する首下がり症、どう防ぐ、どう治す。 遠藤健司 ワニプラス社
4)Endo K, Nishimura H, Sawaji Y, Aihara T, Suzuki H, Konishi T, Nagayama K, Yamamoto K. Contrast-enhanced Magnetic Resonance Imaging in Patients With Dropped Head Syndrome. Spine (Phila Pa 1976). 2024 Mar 15;49(6):385-389. doi: 10.1097/BRS.0000000000004841. Epub 2023 Oct 4. PMID: 37791664.
5)Endo K, Kanai H, Sawaji Y, Aihara T, Suzuki H, Konishi T, Nishimura H, Yamamoto K. Nuchal Ligament Reconstruction Surgery for Dropped Head Syndrome: A Case Report. JBJS Case Connect. 2024 Oct 18;14(4):e23.00611. doi: 10.2106/JBJS.CC.23.00611. PMID: 39423291; PMCID: PMC11486988.

治療の効果は、どのくらいサポートなしで前を向いて歩けるかで判定され、数歩で困難、数分で困難、10分程度は可能、30分以上可能、さらに改善すると首の不調を感じずに歩くことができるようになります。

重症度の分類を下記に示します(文献 Endo K., Sawaji Y, Aihara T., Suzuki H., Matsuoka Y, Nishimura H, Takamatsu T, Konish T. and Yamamoto K (2021).:Eight cases of sudden onset dropped head syndrome ⎼ Illustrative cases, JNS lessons. より和文として引用)。

Grade程度状態
0正常30分以上連続して前を向いて歩くことが普通にできる
1軽症30分以上連続して前を向いて歩くことができるが、首が重くなる
2中等度サポートなしで30分以上連続して前を向いて歩くことができない
3生活に支障あり数分以上サポートなしで、連続して前を向いて歩くことができない
4生活に大きな支障あり数分以上サポートなしで、連続して前を向いて立つことができない
+N医師に必ず相談の必要あり数分以上サポートなしで、連続して前を向いて立つことができない

Grade 2か3程度ですと経過が良いので、早めに相談してください。

治療は、お薬・装具・バンドなどありますが、運動・リハビリが大切です(下記図)。
首を支える力を評価する首下がりテストを考案しました(天井を見えるか、腹ばいで前を見れるか、四つん這いで前を見れるか)。

下記は、外来で初めて首下がりを訴えていらっしゃった患者さんのテストの結果です。リハビリでこれらの動作が少しずつ可能になってきます。

早期診断と治療が大切です

リハビリをしても、生活の質が保てない場合は手術を考慮します。

診療日

火曜日午前【完全予約制】※まずは遠藤医師以外の整形外科を受診し必要な検査等を行った後、遠藤医師の診察予約となります。お電話にてお問合せください。

遠藤医師

脊椎、脊髄疾患について困っていること、不安に思っていることは遠慮なくご相談ください。セカンドオピニオンだけでも結構です。
患者さんにとって一番良い治療を考えていきたいと思っています。

遠藤健司医師  東京医科大学病院教授

外来担当医表

医師紹介

かない ひろし

金井 洋

院長

専門分野

整形外科一般、脊髄、関節

経  歴

東京医科大学卒

資  格

日本整形外科学会整形外科専門医

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よしかわ こうじろう

吉川 光次朗

整形外科部長

専門分野

整形外科一般、

経  歴

北里大学卒

資  格

日本整形外科学会整形外科専門医

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いしかわ しょう

石川 翔

専門分野

整形外科一般

経  歴

東京医科大学卒業
東京大学医学部附属病院初期臨床研修医
東京医科大学病院後期研修医

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えんどう けんじ

遠藤 健司

専門分野

整形外科一般、脊椎脊髄、骨粗しょう症、頸椎、腰椎、慢性疼痛

経  歴

東京医科大学卒

東京医科大学病院整形外科教授

資  格

日本専門医機構認定整形外科専門医

日本整形外科学会脊椎脊髄病医

日本脊椎脊髄病学会指導医

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こやま たかし

小山 尊士

専門分野

整形外科一般、足、関節

経  歴

東京医科大学病院整形外科臨床准教授

資  格

日本整形外科学会認定整形外科専門医

日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医

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いわき たかひろ

岩城 敬博

専門分野

整形外科一般、人工関節(股関節・膝関節)

経  歴

東京医科大学八王子医療センター 助教・医長

資  格

日本整形外科学会整形外科専門医

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かなざわ けい

金澤 慶

専門分野

整形外科一般

経  歴

金澤病院整形外科 

資  格

日本整形外科学会整形外科専門医

日本整形外科学会認定リウマチ医

日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医

日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医

日本内科学会認定内科医

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つじ はなこ

辻 華子

専門分野

整形外科一般

経  歴

東京医科大学病院整形外科

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